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ソトレシピニュース

モーラナイフアドベンチャーin Japanでブッシュクラフト体験②ナイフがもたらす生きる力

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前編から読む


天然記念物の湯の滝へトレッキング


オンネトー湯の滝

2日目午前のワークショップを終え、予告通りのランチハイキングへ。30分ほどのトレッキングにて、天然記念物にも指定されているオンネトー湯の滝へ向かいます。


苔むした森

アカエゾマツの針葉樹林帯のなかは、地表まであまり陽が届かないのか、苔むした森が広がり、ジブリの世界観を彷彿とさせます。


苔むした森

この時期見られる“銀竜草(ギンリョウソウ)”にも遭遇(多分)!


目的地である湯の滝に到着。森を抜けたタイミングで雨が降り始めてきました……。


オンネトー湯の滝

天然記念物に指定されている湯の滝は、日本の地質百選にも選ばれていて、マンガン鉱物を生成する「生きている鉱床」なのだとか。また、陸上では世界唯一の場所であるという稀な土地。溶岩の崖を温泉水が流れてきており、かつては滝上の池は露天風呂として利用されていたのだそうです。


いよいよ、お楽しみのランチタイム。雨をしのげる休憩所に入り配給されたお弁当をいただきます。


アイヌ料理弁当

実は、今回のイベント中のごはんは、前夜にアイヌの伝統歌を披露してくれた、阿寒湖でアイヌ料理店を営む方々がすべてプロデュース。なかなか食べる機会のないアイヌの伝統料理を楽しめるのも、今回のモーラナイフアドベンチャーの楽しみでもあります。


写真のメニューは、山菜の炊き込みご飯と、サラダにホッケフライ、ふきの漬け物と、ラタシケプと呼ばれるかぼちゃの和え物。


ラタシケプは甘みのなかに独特の渋みを感じる味で、これはアイヌ料理でよく使われる「シケレベ」という木の実の味。かぼちゃの甘みのなかでアクセントととなって効いています。


お腹も満たされたところで、雨の中、野営場へ戻ります。


アイヌのカッティングボード“メノコイタ”制作


野営場に戻り、2つ目のワークショップのスタートです。2人目のアンバサダーはクラフト作家の長野修平氏。焚き火&野外料理人としても活躍されており、キャンプ雑誌やDIY誌などでの連載も多く手掛けてらっしゃいます。


“クラフト作家長野修平”

また、長野氏は北海道出身で、アイヌ文化にも精通されているのだとか。そこで、ここでのワークショップはアイヌのカッティングボードであるメノコイタを制作するとのこと。モーラナイフで、アイヌの伝統工芸品を制作するという、まさにモーラナイフアドベンチャー“in Japan”の真骨頂なワークショップです。


アイヌのメノコイタ

写真は長野氏制作の見本。持ち手近くに窪みがあります。これは、アイヌでは神の魚といわれる“鮭”を捌きいただく際に、イクラを溜めおくためにあるとのこと。まな板としてもそのまま食器としても使える、実用的な調理道具ですよね。お刺身を盛って、窪みはしょう油皿にするなど、用途を考えるだけでもワクワクしてきます。


また、持ち手の反対側(写真手前側)はカーブしていますが、これは洗った際にこちらを下側にして立てかけておくと、水が切れやすい効果があるとのこと。長野氏ならではのアレンジが光ります。


アックスでバトニング

まずは持ち手の部分を作ります。適当な太さまで切り込みを入れて、斧を当てて割り落としていきます。


アックスでバトニング

ここまでは、なんとなく作業イメージが湧きますが、はてさて、窪みの部分はどう作るのか。そこで登場するのが刃の丸いカービングナイフです。


カービングナイフ

これはスプーンやマグカップなどをクラフトする際に大活躍するナイフ。とはいえ、大きく削れるわけではないので、自分の思い描いた形になるまで地道に削り続けていく根気が必要です。


カービングナイフ

黙々と削り続けますが、当然、終わるわけもなく。午前中のバターナイフ同様、宿題となりました……。


紙ヤスリの代わりにトクサを使う

ちなみに、仕上げにはたどり着けませんでしたが、事前にトクサも用意されていました。トクサとは、かつて木製品の仕上げ工程で多く使われていたもので、現代での紙ヤスリの役割を担います。今回のワークショップでは、仕上げで表面を磨く際に使う予定でした。トクサは歯ブラシとしても使われていたそうです。


モーラナイフを使ったブッシュクラフト体験


本日最後のワークショップは、ブッシュクフラト体験です。ブッシュクラフトとは、簡単に説明すると“野外生活の知恵”です。にわかにブームにもなっており、道具に囲まれた便利なオートキャンプとは一線を画し、限られた道具だけで臨み、古来からの知恵と工夫で野営を楽しむ一種のキャンプスタイルとしても人気を集めていますね。


デイブ・カンタベリー

そして、講師はアメリカから来日したデイブ・カンタベリー氏。日本でも訳書が出版されている「ブッシュクラフトの教科書」(誠文堂新光社)の著者です。今回は、モーラナイフのグローバルアンバサダーとして、ナイフを使ったブッシュクラフトスキルの一部を伝授していただけるとのこと。大変貴重な機会です!


まずは、ライターやマッチがなくても火が熾せるスキルを学びます。


“白樺を着火剤にする”

野外で生活をする上で、もっとも重要なのは“体温保持”です。そして、何より体を暖めてくれるのは“火”以外にありません。


森の中であれば、燃やすための焚き付けや焚き木は容易に見つけられるものですが、この日のように雨が降っていると、それも難しくなってしまいます。


そこでデイブ氏が教えてくれたのは、白樺の木の皮をナイフでこそいで、乾燥した面を作り出す方法。表面が濡れていても木の内部は乾燥していることもあります。これは白樺に限らず応用できる方法でもあるため、雨に濡れて体温を奪われた際、また、乾燥した焚き付けが手に入らない場合に有効な手段となります。


“メタルマッチで着火する”

そして、メタルマッチで着火します。メタルマッチとは、いわゆる江戸時代の火打石のようなもので、石や金属などを擦り合わせて火を熾すアイテムです。ブッシュクラフトの流行も相まって、ここ数年で急激に知名度が上がりましたが、ただの流行モノではなく、あらゆる環境下で火を熾すことができる、実に頼もしいアイテムなのです。


モーラナイフにはメタルマッチを備えたモデルがラインナップされており、片刃のナイフの背の部分とメタルマッチを擦り合わせて着火をします(参加者にはエルドリスというモデルがノベルティで配られました!)


“白樺に着火”

いとも簡単に着火させてしまうデイブ氏。着火した白樺をタテにして、燃えていない面に炎が行き渡るように持つさりげないテクニックにも舌を巻きます。


“白樺に着火”

毛羽立たせた白樺は実によく燃えます。長く燃えてくれるので、慌てず炎を育てられるますね。追加で用意しておいた焚き付けや小枝を投入していきます。空気を含みやすいように、繊維状にもみ込んでおけばさらに燃えやすいようです。


“白樺に着火”

メタルマッチでの着火方法をおさらいします。写真のように構えたら、左手のナイフでメタルマッチを擦るのではなく、右手のメタルマッチを擦りながら引きます。こうすることで、火を付けたい対象物が手の勢いで動いたりせずに、確実に火花を当てられるとのことです。


“ビバークシェルター”

火熾しの後は、ロープワークを駆使したタープ設営の方法を学びました。


“ビバークシェルター”

繰り返しになりますが、野外生活で大切なのは体温保持です。タープなどでシェルターを作ることで、雨の中でも濡れずにすみますが、これを迅速に行うには慣れが必要です。デイブ氏はいとも簡単に、タープを張っていきます。


“ロープワーク”

木と木の間を渡すリッジライン(シェルターの尾根部分)を結べると、さまざまな形状のシェルターを作ることができるとデイブ氏。


一見するとサバイバルスキルのようなワークショップでもありますが、こうしたスキルを身につけておくと、何かこう自信というか、根拠のない安心感のようなものが芽生えます。ただ習うだけではなく、キャンプのときなどにレジャーの一貫として訓練しておきたいなと思いました。


ナイフとスキルが与えてくれる生きる力


3つのワークショップとランチハイキングで、とてもハードで濃厚だった2日目。夜にはビンゴ形式で景品が配られるなど楽しい宴も催されましたが、疲れ果ててぐっすりとした眠りにつくことができました。


“箸作り”

3日目の午前中にはヨッゲ氏による箸作りのワークショップが開かれました。長野氏によると、日本のウッドクラフトには“箸に始まり箸に終わる”という言葉があるそうで、シンプルに思われがちな箸作りも、とても奥が深い。


実際、四角の箸を削っていると、滑らかに刃が通る面もあれば、途端に刃が引っかかる面にも出くわします。ヨッゲ氏によると「木と対話をすること」が大切なのだそう。木目を感じ、木目に逆らわず、対話するように削っていくことを学びました。木工作品は、一つとして同じものができ得ないわけです。


モーラナイフを通し、さまざまなワークショップで学びの多い時間を過ごしたアドベンチャーもこれにて終焉。火を熾したり、「食」にまつわるさざまなな木工作品を生み出すナイフは、人間が生きる上で欠かせないものであることを、改めて実感しました。


ただただキャンプをしているだけだと、せいぜい包丁1本あれば事足りてしまうため、あまりナイフの重要性を感じることはありませんでしたが、ナイフとそれを適確に使いこなすスキルがあれば、確実に生きる力・自信が備わりますし、自らの道具を自らで生み出す喜びも得られます。


帰路、体験したことを反芻しながらバスに揺られていると、2日ぶりに電波のあるところに戻ってきました。


そして、そこで目にしたのは西日本豪雨被害のニュースです。


我々も雨に降られたイベントでもありましたが、想像もつかない被害状況が写真や動画ニュースで伝えられていました。


今回の原因は地震や津波ではなく、大雨です。連日続く酷暑も“命に関わる災害レベル”と称されるほど。雨や気温がこれほど危険を及ぼす存在になるなんて……。先月には大阪北部地震が起きたばかり。自分にだけは何も起きないなんて、決して楽観できるものではありません。


正直、今回のイベントで学んださまざまなスキルが、災害に遭ったときに役に立つかはわかりません。それでも、便利な道具やライフラインに頼らずに生きる術を身につけておくことは、決して無駄ではないと確信しています。



この度の大雨による被害に遭われた方に対し、心よりお見舞い申し上げます。


“ダッチオーブンでアイヌ料理”

最後に、ソトレシピとして大事な「食」について。雨や時間帯の影響もあってランチハイキング時以外、食事の写真が撮れていなかったので、せめてもの、ですが、今回のアドベンチャーで提供されたお料理の献立を、一部掲載したいと思います。


【1日目夕食】

チェプオハウ(鮭汁)

玉ねぎいっぱい鹿肉のトマト煮

ベイクドポテト

阿寒湖原産ヒメマスのカルパッチョ風サラダ

鹿肉のスパイシー燻製ロースト


【2日目夕食】

ユクオハウ(鹿汁)

アマム(雑穀入り炊き込みご飯)

ラワンブキ(ふき)の肉詰め

ラタスケプ

野菜サラダ


どれもヒンナヒンナ(食事に感謝する言葉)して美味しくいただいたのですが、驚きだったのはラワンブキの肉詰め。バナナほど直径のあるフキのなかに豚ひき肉が詰め込まれており、しっかりと煮汁が染み込んでいるので絶品だし体も温まるしで感動しました(ロールキャベツに近いかも)。


いつか、ソトレシピとして日本各地の伝統料理も特集していきたいと思います!

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ライターProfile

渡辺有祐
株式会社フィグインク代表取締役。キャンプから登山、ダウンリバーまで、野外活動を趣味としながら、書籍の編集ライティングを生業とする。企画・編集担当した本に「新しいキャンプの教科書」(池田書店)「ブッシュクラフト入門」「CAMPLIFE」「メスティンレシピ」(山と渓谷社)「自作キャンプアイテム教本」「ジビエ 解体・調理の教科書」(グラフィック社)「ヤマレコのとっておきの登山ルート30選」(大泉書店)など。WEBメディア「CANMP HACK」や「.HYAKKEI」にも寄稿し、当サイトの編集長を務める。
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