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ソトレシピニュース

モーラナイフアドベンチャーin Japanでブッシュクラフト体験①サーミとアイヌの邂逅

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日本初上陸のモーラナイフアドベンチャー


スウェーデン王室御用達認定を受けたナイフブランド「モーラナイフ」。日本では、昨年ソトレシピニュースでも紹介したアンプラージュインターナショナル(以下UPI)が取り扱っていますが、この度、スウェーデン本国で人気のアウトドアイベント「モーラナイフアドベンチャー」が日本にも初上陸。7/6~7/8に、北海道のオンネトー国営野営場で行われたキャンプイベントに編集部も参加してきました。


UPIについては下記の記事を参照

北欧のアウトドア文化を広める「UPI OUTDOOR 鎌倉」に潜入!


釧路空港

モーラナイフ・アドベンチャー in Japanの会場までは、たんちょう釧路空港集合で、そこから送迎バスでアプローチ。空港周辺にはヒグマやエゾシカ、シマフクロウなど、北海道ならではの動物たちのオブジェがさまざま並び、アドベンチャーな雰囲気を漂わせてくれます。


バスでオンネトー湖

空港からバスに揺られること約1時間半ほど(さすがの信号の少なさ)。開催地、オンネトー湖に到着しました。あまり聞き馴染みのないオンネトー湖は、日本の秘境100選にもなっている阿寒国立公園内にある湖。アイヌ語でオンネ(=年老いた)トー(=湖沼)という意味なんだそうです。どの程度秘境なのかは伝わりにくいかもしれませんが、到着30分前から携帯電話の電波はなくなりました(近くの宿で一瞬つながりましたが)。


オンネトー湖周遊コース

バスを降りるとUPIスタッフが出迎えてくれていましたが、ここでサプライズ。開催地である国営野営場は湖の反対側にあるそうで、ここから30分ほど周遊コースをトレッキングするとのこと。いよいよ“アドベンチャー”の始まりです。


雨後のオンネトー湖周遊コース 雨後のオンネトー湖周遊コース

この日は晴れ間がのぞく好天に恵まれましたが、前日までは雨続きだった北海道。周遊コースには滑りやすい箇所が点在するも、オンネトー湖の静けさと美しさに魅入られっぱなしの30分。


オンネトー野営場

開催地であるオンネトー野営場へ正真正銘到着。イベントの簡単な説明とノベルティを受け取り、各々テント設営にとりかかります。


“森林湖畔サイトオンネトー野営場"

オンネトー野営場は、アカエゾマツやトドマツなど高い広葉樹に囲まれた野趣あふれる湖畔の野営場。暑いときは大変過ごしやすいと思いますが、今回のイベント中は7月なのにむしろ寒さを感じるほどでした。今回、イベントには組み込まれていませんでしたが、近く(2kmほど)で温泉を楽しむこともできるようです。


デイブカンタベリーと寒川一

気温が下がってきたこともあり、ウェルカムパーティーまで焚き火の準備が進められます。さすがのモーラナイフアドベンチャー、こんなさりげない準備シーンも演出されたかのような雰囲気。前述の通り、雨続きでスウェディッシュトーチにもかなりの湿気が含まれており、なかなか着火してくれません。


デイブカンタベリーと本間光彦

さて、アンプラージュインターナショナルの代表本間光彦氏のご挨拶とともに、ウェルカムパーティースタート。今回のイベントの主目的であるブッシュクラフトスキルや木工のワークショップを行う、3名のモーラナイフアンバサダーの紹介、最終日までの予定などを確認しました。



また、ウェルカムパーティーでは「カピウとアパッポ」というアイヌ文化を継ぐ2人による、アイヌ伝統歌やアイヌ由来の楽器の演奏などが披露されました。


さて、なぜモーラナイフアドベンチャーでアイヌの伝統歌が披露されるのか。それにはやや遠回しながらも、実に親和性の高い理由が存在します。


スウェーデンの伝統的な実用ナイフ、モーラナイフ。モーラナイフが生まれたスウェーデンが位置するのは、スカンジナビア半島、いわゆる北欧と呼ばれる地域です。その半島北部にラップランドという地域があり、この地域には古くからサーミ人という先住民族が暮らしています。


サーミの人々の暮らしの上で欠かせないもの、それがナイフであり、ナイフを扱う技術や知恵は、今もなお継承されています。時を経て、その一旦はモーラナイフとして繋がっており、モーラナイフに触れることで、わずかながら我々もサーミ人の文化に触れているとも言えるのですが。


そんなサーミ人の歴史や文化、生活様式は驚くほど北海道のアイヌ民族と類似性があります。具体的な事例は枚挙にいとまがないため避けますが、個人的に注目したのは、やはり刃物文化の類似性でしょうか。


アイヌ文化も近年注目を集めています。アニメも放映されていた人気マンガ「ゴールデンカムイ」(集英社)では、アイヌ民族の暮らしや文化が幅広く紹介されていますが、アイヌの伝統的な小刀「マキリ」は、アイヌ文化においても、また物語においても重要なピースとなっています。物語はさておき、マキリの用途はもちろん、武器ではなく道具である点、柄や鞘に装飾が施されている点など、自然とサーミの刃物(プーッコ)文化との類似性を想起させます。


“アイヌとサーミの文化”

オンネトー湖はもともとアイヌ民族の大切な場所だったとのことで、モーラナイフアドベンチャーが日本のこの地で行われることは、実に類似性の高い2つの伝統民族の文化の邂逅でもあるわけです。


ワークショップにて、ナイフワークやブッシュクラフトスキルを学ぶことがモーラナイフアドベンチャーin Japanの本来の目的ですが、2つの文化が触れ合い、どういった化学反応が起きるのか、そしてその場面に立ち会うことが、このイベントに参加する裏テーマでもあるようです。


アイヌの幻想的な音楽、身を暖めてくれる焚き火の炎の揺らぎ、現実離れした環境にややトリップしながら(お酒が進んだこともありますが)、得難い経験をしに来たのだと改めて実感。翌日のワークショップ、ハイキングに備えてテントに潜り込みました。


スウェーデンの木工作家によるバターナイフ制作ワークショップ


2日目、ワークショップは3回行われ、途中にランチハイキングをはさむなかなかハードな日程(lunch “viking”ではなく“hiking”です)。8時には朝食を済ませ、さっそく午前の部が始まります。



最初に登場したのはスウェーデンの木工作家、ヨッゲ・スンクヴィスト氏。ヨッゲ氏は、四世代に渡って工芸職人をつとめてきた家庭に生まれ、北欧各国をはじめアメリカやドイツなど、世界をまたいで木工スキルを教えてきた方。今回モーラナイフアドベンチャーin Japanに公認のグローバルアンバサダーとして来日した一人です。



見本として見せてもらったヨッゲさん自身の作品は、見事の一言。



ヨッゲ氏のワークショップでは、バターナイフを制作することに(アウトドア料理にまつわるメディアとしても、遠からずのジャンルでひと安心)。まずは、バターナイフのサイズに事前に調整された端材に、目安の形を描いていきます(墨付け)。



そして、ナイフで形を整える作業に入る前に、けっこう大胆に斧で削っていきます。斧の扱いに慣れていない身としては、繊細な作業に斧は向かないのでは……、と思っていましたが、斧の金属部分を握るようにして小さく振っていくと、大胆ながらも切りたいところを的確に切り落とせます(持ち方は写真左奥の方の右手のほうが見やすいアングルかも)。


この工程を踏まず、最初からナイフで作業していたら、かなりの時間がかかっていたことでしょう。バターナイフに近い形状に、斧だけでだいぶ近づくことができました。




斧での作業を終えたら、モーラナイフ(参加者にはノベルティとして、カービングナイフが配られていました!)を使ってバターナイフの形に整えていきます。ヨッゲ氏によると、10種以上のナイフワークがあるとのこと。形を整えていくと、持ち手とナイフの向きの関係上、削りにくいところが出てきます。そのため、さまざまなナイフワークを覚えておくと、削りやすいだけでなく、より安全にナイフを扱うことができるのです。


写真の削り方は、細くなってしっかり対象物を保持できなくなったときに、手と胸で対象物を固定して削る方法。ナイフの刃を自身に向けて削ることになるため、一見すると躊躇してしまいがちですが、仮に刃が体を傷つけようとしても、ナイフを握る拳が先に胸に当たるため心配ありません。対象物をしっかりと固定できるため、むしろ削りやすい、まさに目からウロコの方法でした。


時間の関係上、参加者のほとんどが、バターナイフを完成させるところまでは至りませんでしたが、ヨッゲ氏より「Keep on carving(削り続けなさい)!」という言葉を授かり、各自持ち帰って、気の済むまで思い描いた形に整えていくことでしょう。


ランチハイキングをはさんでの、残る2つのワークショップについては、後編にて紹介することにします(後編ではもう少しソトレシピ的になる予定)。

後編を読む

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ライターProfile

渡辺有祐
株式会社フィグインク代表取締役。キャンプから登山、ダウンリバーまで、野外活動が趣味としながら、書籍の編集ライティングを生業とする。企画・編集担当した本に「新しいキャンプの教科書」(池田書店)「ブッシュクラフト入門」「CAMPLIFE」「メスティンレシピ」(山と渓谷社)「自作キャンプアイテム教本」「ジビエ 解体・調理の教科書」(グラフィック社)「ヤマレコのとっておきの登山ルート30選」(大泉書店)など。WEBメディア「CANMP HACK」や「.HYAKKEI」にも寄稿し、当サイトの編集長を務める。
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